母とエンディングノート作成をした話

以前、記事の中で少しお話ししましたが、母の希望は家族葬です。祖父の世代から葬儀用の写真を用意したりお墓を購入したりと、最期を迎えるために準備をします。そのため、母の口からも葬儀の話しやお墓の話しを良く聞かされていました。

その時はうなずきながら聞いてはいたものの、まだ元気なのだから「遠い話だろう」と内心は思っていたんです。しかし、介護をしていると母が歳をとっていく様子を目の当たりにし、過ごす時間をもっと大切にしておかなければ、残された時間はあっという間に過ぎてしまうかもしれないと思い始めました。

そんな時「認知症介護で役立つ便利グッズ」のページで紹介したエンディングノートを思い出しました。母も頭の中の「終活」を一緒に整理して理解し、形にしておこうと考えたんです。

エンディングノートは母の世代からすると新しい取り組みなので、終活を先導するような役割をするツールだと知らない方も多くいると思います。早速、母にエンディングノートを一緒に作成しないか相談しました。

エンディングノートについて母に教える

母には終活の一環として、エンディングノートは便利だと伝えるところからスタートです。母からはお墓や葬儀、財産の話しを度々聞いていたので話は早かったです。

エンディングノートは、希望している葬儀の形式や財産の置き場所、死後の手続きなどを残された家族に残すための終活ノートです。

母から「遺言書みたいなものかしら?」と質問があったのですが、エンディングノートは決まった形式で書くものではないので、法的効力はありません。遺言書を書いたのであれば、その有無をエンディングノートに記載しておくと家族もトラブルなく過ごせると伝えました。高齢者にエンディングノートをすすめる時は、最初に遺言書とは「別もの」だと伝える必要があると思います。

エンディングノートのメリットについて

エンディングノートを作らずに、終活に取り組むのは可能です。しかし作らないよりは、作ったほうがたくさんのメリットがありますよ。

気軽に作れる

形式に沿って書くような法的効力のあるものではなく、自分自身の整理をつけるために役立てるノートなので気軽に書き進められます。大切にしている宝石1つとっても、長女には指輪で次女にはネックレスを形見として残したい。というように自分の言葉で自由に書きます。財産を書き記していく項目で、兄弟同士がトラブルになりかねない。と思うところは「遺言書を書く」と決めておくといいでしょう。エンディングノートは思いのままに、書き進められます。

親族の勘違いを防げる

例えば母の死後、納骨の方法を「樹木葬」とした場合、周囲から「勝手に決めたのでは」と勘違いされる可能性があります。“故人に口なし”と言われるように「安く収まる埋葬方法を選んだ」と周囲に思われたら家族はストレスを抱えてしまうでしょう。エンディングノートに、故人の直筆で埋葬方法について希望が書かれていれば、「独断ではない」と周囲から理解を得られます。

人生を振り返る時間になる

エンディングノートに各項目は、人生をテーマにしています。これまでの成長過程から、現在に至るまで決して平坦な道ではなかったでしょう。結婚までのエピソードや家族との思い出、自分しか知らないことなどを記載します。人生を振り返ると今どうやって充実させて生きるか、これからを大切にしたいという気持ちも芽生えますよ。エンディングノートは、人生を振り返ることによって当たり前だった毎日を「もっと丁寧に生きよう」と思わせてくれるでしょう。

もしものリスクに備える

突然の重い病気や認知症になった時、身の回りの品や借金の存在、連絡をしてほしい相手など、どうしてほしいかを家族に伝えられます。自分のためにと思われがちですが「大切な家族を守るため」に必要です。身体の自由がきかなくなってからでは行動しづらいので元気なうちにもしものリスクに備えましょう。

エンディングノートの記載項目

メリットはたくさんあると理解できたところで、具体的に何を書いたらいいか最初はわからないと思います。
残しておけば家族が助かる!という目線で、おすすめの記載項目を紹介しましょう。

基本情報

自己紹介のような項目ですが、名前と住所や本席、電話番号を記載します。誰でもかける項目なので悩まずに書けるところがポイントです。最初で迷うとエンディングノートが「面倒くさい」と感じて挫折してしまうので、この項目でリズムを掴みましょう。

遺言書の有無

自筆証書の遺言や公正証書遺書など、法的効力のある遺言書の有無を記載します。作成日や保管場所、遺言執行者と連絡先を記載しましょう。遺言書を作成しているか家族がわからないと、残された家族で遺産分割協議を始めたり、遺言書を探し回ったりします。この項目をきっかけに、遺言書の作成をしてみてもいいかもしれません。

預貯金

金融機関の口座にある資産を記載します。地方銀行や郵便局、ネットなどいくつもの金融機関に口座があります。資産がどこにあるかわかるだけでも、残された家族は助かりますよ。細かな金額は書かなくても構いません。

その他:資産

一戸建てやマンション、別荘など物件を所有している方は、住所や登記簿上の所在地を記載します。法務局で発行される登記事項証明書を確認すると、詳細がわかりますよ。不動産以外にも、株式投資や投資信託、ネット証券などの、金融機関名と支店名、支店コードを記載してください。特にネット証券の取引は郵便物がないので、家族に気づかれない資産となってしまいます。

人に貸しているお金

貸しているお金は、残された家族にでも返してもらいたいですよね。相手の名前や連絡先を書きましょう。貸付日と金額、返済期間や返済方法も細かく書いてください。契約書の有無も書いてくださいね。

保険

生命保険の情報を記載する項目です。死亡保険金は相続税の対象となるため、相続人の数で非課税枠が決まっています。残された遺族の請求がスムーズにできるよう、保険の種類や商品名、保険金受取人などきちんとまとめておきましょう。死亡保険については、保険会社の担当者にエンディングノートに詳細を記載したいと、相談してみるといいでしょう。

パソコンや携帯のログイン情報

日ごろ、インターネットを使って金融取引をしている方は、PC起動時のパスワードを記載しましょう。残された遺族がアクセスをする必要がでてくるかもしれません。

負債

住宅ローンや自動車ローン、カードローンなど、マイナスの財産も記載しましょう。相続ではプラスの財産だけでなく、マイナスの財産も受け継ぎます。相続の放棄ができる期間は3ヶ月と短いため、家族に借金を背負わせる選択を迷わせてはいけません。隠さずに記載しておきましょう。

葬儀の希望

私の母は「家族葬」という希望があるように形式を記載します。広く知らせて行う葬儀は一般葬、火葬だけを希望する場合は、火葬式があります。家族に任せると記載しても構いません。次に、仏教やキリスト教、神道など、宗教も記載します。最近では生前に予約する方も増えていて、葬儀費用をすでに支払っているケースもありますね。その場合は、生前予約をしている旨を記載しましょう。お墓の有無や埋葬の希望も記載してください。本人が亡くなった直後、遺族はパニック状態です。葬儀社のなすがままにする家族も多いので、事前準備はおすすめですよ。元気な時に葬儀会社に相談しておくのも1つの手です。

連絡先

親戚や知人、友人の連絡先一覧を作ります。葬儀の連絡をしてほしいかどうかもわかるようにするといいでしょう。親族のパートナーや子供の名前、大学時代の友人など、間柄も書いておくと家族も連絡しやすいです。

家族へのメッセージ

家族への想いを綴る項目です。普段は伝えにくかった感謝の気持ちや懐かしい思い出など、家族に残しておきたい思いを綴りましょう。写真を一緒に貼っておくと、思い出が蘇るページになりますよ。

母とエンディングノートを作るにあたって、最初は説明が少し難しく感じましたがとても大切なステップだと理解してもらいました。母は元気ですが、自身に何かあっても残された家族に心配をかけないための準備ができたので喜んでいましたよ。先の心配をせずに「思いきり残りの人生を楽しめる!」と、母は少し明るくなりました。ぜひ皆さんもご家族とエンディングノート
に取り組んでみてはいかがでしょうか?